高齢者などの生活者が普通自動車免許を返納(免許返納)するのは、自身や家族、社会の安全を守るためです。しかし免許を返納した本人に待ち受けているのは、生活が不便になる現実です。
これまで自分の車で好きなときに好きな場所に行けていたのに、それができなくなります。
しかし工夫次第でこの難問を解決することができます。
この記事では、免許返納によってどのような不便が生じるのかを紹介したうえで、その解消方法を解説します。

これまで自家用車を多用していた人は、免許を返納すると次のような不便が生じるかもしれません。
免許返納で想定される不便
いずれも高齢者や生活者にとって深刻な問題になりかねないので、1つずつ解説していきます。
地方に住んでいる方のなかには、買い物用の自家用車を持っている人がいるかもしれません。例えば10km離れた、スーパーマーケットが併設されたショッピングモールに週1回通い、毎回まとめ買いしている人が免許を返納してしまうと、そこに行くことも、大量の荷物を持ち帰ることも困難になります。
免許を返納する人がシニアの場合、通院に自動車を使えなくなります。シニアのなかには、眼科クリニック、整形外科クリニック、歯科クリニック、内科クリニックに通っている人もいるでしょう。自家用車が使えなくなると、出先から別の出先に移動することがしにくくなります。
あるいは、大病院が自宅から離れた郊外にあり、そこで定期的に検査や治療を受けている人は、自家用車が使えなくなると「面倒臭い」と感じてしまうかもしれません。その気持ちが通院回数を減らしてしまうと、健康を害してしまうでしょう。
自家用車を使って孫を保育園や幼稚園に送り迎えしている人や、働いている子供を最寄りの鉄道駅まで送迎している人は、自家用車を失うとこれらの重要な家族サービスを提供できなくなります。そうなると子や孫たちに不便なだけでなく、送迎している本人の喜びも消えてしまいます。
高齢者にとって自家用車は「ちょっとそこまで」の用事を済ませるのに欠かせない手段になっているかもしれません。「ちょっとそこまで」には、友達のところに行くことや、喫茶店に行くこと、美容院に行くこと、野球場に行くことなどが含まれます。
免許返納は、その人の活動範囲と活動量を減らしてしまう恐れがあります。
純粋に自動車の運転を楽しんでいる人が免許を返納してしまうと「ドライブ・ロス」になってしまうかもしれません。なんとなく自家用車を2時間走らせて海をみに行く、といったことができなくなります。自家用車があれば夫婦で思い立ったときに温泉に行けますが、免許返納によってそれが不可能になります。
自家用車を手離すだけなら、車が必要になったらレンタカーを利用することができますが、免許を返納してしまうとレンタカーも使えません。
免許返納は、完全に運転と別れることを意味します。
免許返納で生じる不便がこれだけ多く存在することを知ってしまうと、「返納したくない」と思われるかもしれません。しかし運転に不安を感じたのなら、自分のために、家族のために、社会のために返納したほうがよいでしょう。
そして身近な交通インフラや代替案を使うことで不便の多くは解消できます。そのコツを紹介します。ただし解決が困難なものもあります。
これまでインターネットを使って買い物をしたことがない方は、ぜひ免許返納の機会に試してみてください。免許も自家用車も持っている人でもネットでの買い物を利用しているので、これを利用しないのはもったいない、といえます。
ネットでの買い物には、アマゾンや楽天市場などのネット通販もありますが、最近は近所のコンビニや郊外のスーパーマーケットがインターネット経由で食料や生活必需品を送り届けてくれます。
オンライン診療は、患者さんと医師が、インターネットのテレビ会議システムを使って、スマホやパソコンの画面上でやり取りをして医療を受ける方法です。患者さんは自宅で自分のスマホを操作するだけで診療が終わり、薬も宅配便で届きます。
オンライン診療はまだ、すべての治療に使えるわけではありませんし、歯の治療のように物理的な接触が必要な場合も利用できません。しかし複数のクリニックに通っている人が、1カ所でもオンライン診療に切り替えれば、車での移動の回数を減らすことができます。
免許を返納してしまうと、自分で車を運転して子や孫の送迎をすることはできなくなり、これを解決する手段はありません。
しかしそもそも子や孫の送迎は、その子たちの成長とともに要らなくなります。免許返納で送迎が不可能になることは、その日が早まっただけと考えることができます。
「できなくなることはキッパリあきらめる」と考えるようにすると、気持ちが楽になるのではないでしょうか。
免許を返納すると、細々した用事を自家用車で済ませることができなくなります。友達とのコミュニケーションに自家用車を使っていた人は、免許返納によって楽しみが減ってしまいます。
この場合も考え方を変えてみましょう。別の楽しみをみつけるようにしてみてはいかがでしょうか。車が使えなくても、足腰が丈夫なら近所をウォーキングすることができます。
ドライブを趣味にしている人は、免許返納によって趣味を失うことになります。しかし自分で運転しなくても、人に運転してもらえば車に乗ることはできます。
ドライブ旅行はできなくなっても、日帰り観光バスを使えばほとんど同じ楽しみが得られます。市区町村役場やショッピングモールなどが運営する地域巡回バスも、これに乗れば走っているような感覚になれる楽しみがあります。
免許返納によってレンタカーが利用できなくなることは解決できないでしょう。
レンタカーを旅行に使っていた人は、公共交通機関を利用した旅行に切り替えてみてください。仕事でレンタカーを利用していた人は、移動や運搬を業者に依頼することになるでしょう。
シニアカーをご存知でしょうか。電気の力で走る小型の3輪または4輪の車両で、ハンドル形電動車いすとも呼ばれます。道路交通法ではシニアカーに乗っている人は「歩行者」として扱われるため、運転免許は必要ありません。歩道があれば歩道を、歩道がない道路では路側帯や道路の右側端を通行し、信号も歩行者用の信号に従います。速度は時速6kmを超えない設計です。
一方、自動車やバイクと同じように車道を走れるのが特定小型原動機付自転車です。16歳以上であれば免許は要らず、車道の左端を時速20kmまでの速度で走行できます。車体側のモードを切り替えて「特例特定小型原動機付自転車」の状態にすれば、時速6kmで歩道を通ることもできます(通行を認める標識がある歩道に限ります)。
| 項目 | シニアカー | 特定小型原動機付自転車 |
|---|---|---|
| 法律上の扱い | 歩行者 | 車両(原動機付自転車の一種) |
| 運転免許 | 不要 | 不要。ただし16歳未満は運転できない |
| 速度 | 時速6kmを超えない | 構造上、時速20kmを超える速度を出せない |
| 走る場所 | 歩道が原則。歩道がなければ路側帯や道路の右側端 | 車道の左端が原則。特例特定小型モード(時速6km)なら標識のある歩道も可 |
| ナンバー・自賠責保険 | どちらも不要 | どちらも必要 |
| ヘルメット | 規定なし | 努力義務 |
自家用車が便利なのは、遠くに行くことも近くを走ることも両方できるからです。免許を返納するとどちらも不可能になるわけですが、遠くに行くための交通手段と近くに行くための交通手段を確保することで、不便を解消できます。
近くの用事を済ますのであれば、シニアカーや特定小型などの小型の電動車両で十分です。そして遠くに行くときに公共交通機関を使えばよいのです。
ポイント:免許返納後の「近くの足」の選び方
歩くこと自体にはまだ不自由がなく、自家用車の代わりになる一台がほしい方にはELEGRAN(エレグラン)。座ったまま乗り降りでき、航続距離はデュアルバッテリー搭載時で約130km(バッテリー1基の標準構成では約55~65km)です。
シニアカーを検討するくらい歩行に不安が出てきた方にはエレポーター。全長が短くシニアカーに近いサイズ感で、狭い道でも取り回しがしやすい一台です。
▶ ELEMOs公式YouTubeチャンネルより
自動車の運転が不安になると「免許返納を考えなければならない」と考える一方で、自家用車が使えなくなると生活が不便になり新たな不安になりかねません。
しかし免許がなくても、自動車を運転できなくなっても、なんとかなります。まずは、免許返納によって不便になることを、紙に書き出してみてください。次に「これらの不便を解消するにはどうすればよいか」と考えてみると、案外簡単に解決策がみつかるはずです。自分で解決策が出てこなかったら、家族や友人に相談してみてください。
そのとききっと、この記事で紹介した解消法が役に立つはずです。
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